2006年11月23日

藤沢周平

このごろ読書といえば小説。

読書の秋だけれど
ほかにもやりたいことがあるので
そんなに多くは読まない。
だからこそ
読むのなら小説がいい。

ちょこっと読んでは
ほかに手を伸ばす。
そういう読み方が楽しい。

読みたいと思える本が
手近にいろいろとあるのが快感。

藤沢周平をもっと読みたい。

市井ものがいい。

藤沢作品には
読んだあとで
不思議な余韻が感じられるものが多い。

それは例えて言うと、

車が走り去ったあとの音の名残。

鳴きながら飛び過ぎていくカラスを
見送ったときのあの静けさ。

夕焼け空を眺めていて
とぷんと太陽が山の端に隠れ、
金色がオレンジに
オレンジが紫になり
やがて闇の色にすべてが還っていく
その数分間。

たいした別れでもない
ある見送りの後、
ふと振り返って
新幹線の最後尾の赤い光が
小さくなっていくのを見たときの
あの感じ。

おおげさな感動というようなものではない。
でも
確かに感じる
何かの心の動き。

藤沢作品を読むと
そんな
何気ない
空気のような気持ちが
胸の中に
一瞬たちあがって

そして
ふわっと広がり
消えていく。

せつなさなのか、
悲しみなのか、
その両方のような
その間のような…

名前がつけられない
ささやかな感情。

読んだあとで
心のたんすの隅でいつもは控えめにしている
真心や誠実さというような
人らしい気持ちに、
そっと明かりがともる。

嬉しくなる。

小説のもつ力。
語る力。
説明や説得よりも
大きく深く響き
長く心に波を与える力。
それに巻き込まれる気持ちよさ。

物語の世界にもぐり
その底のほうに
自分にとっての真実を見つけて
また上がってくるとき。

それまでと少し違う
心のありかを確かめたあとで
自分の手を胸にあててみる。
いつもより
少しおだやかなまなざしでいられる。

このごろの私は
藤沢周平の中で泳ぐのが
とても心地よい。



posted by ミューズ at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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